ゲンジボタルは午後8時から9時までの間に、いつも決まった場所で飛びます。これは、ホタルの子孫を繋いでいくための戦略なのです。ばらばらな時間にばらばらな場所で飛んではオスとメスが出会う確率が低くなります。そのため、時間と場所(ランドマーク)を決めてオスが一斉に群がり、そこにメスが集まってくるのです。ユスリカの成虫が作る蚊柱もそうです。また、ミツバチの女王バチの交尾飛行も同じだといえます。ミツバチのオスは同じ時間・同じ場所で群がり、そこに女王バチが飛行して行くのです。
令和2年12月
万葉集にすでに詠まれている「ほたる」という言葉の語源として、貝原益軒は「ほは火なり、たるは垂るなり」といって、火垂る説をとっています。また、ほたるを星と見立てた星垂る説もあるようです。
野坂昭如の小説をアニメ化した「火垂るの墓」が有名です。実際、ホタルが下に落ちるのを見ると、火や星が落ちると思った昔の人の気持ちがよくわかります。
令和2年11月
童謡「ほたるこい」の歌詞では、「あっちのみずは にがいぞ/こっちのみずは あまいぞ」となっています。多分、「にがい」は「きたない」、「あまい」は「きれい」で、こっちの川はきれいだから、こっちにおいでと、ホタルを誘っている歌と考えるのが自然かなと思います。調べてみると、あっちの苦い水は、世知辛い世間の水、こっちの甘い水は、仏が施す水のことだという説もあるようです。
令和2年10月
ホタルの卵はふ化する前に黒ずんできます。それは、卵の中の幼虫が透けて見えるようになるからです。顕微鏡で拡大すると、丸くなって動いているのが観察されます。卵の形も円形から楕円形にいびつになります。
令和2年9月
産卵直後の卵
ふ化直前の卵
ホタル(ゲンジボタル・ヘイケボタル)は成虫と幼虫では呼吸をする所が違います。
●成虫・・・腹の横に穴(気門)があり、気門を開閉して呼吸をします。
●幼虫・・・腹の横に二股になったエラ足があり、長い方がエラで短い方が気門です。水中ではエラで呼吸し、上陸すると気門で呼吸します。
令和2年8月
ゲンジボタルの幼虫
胸部から3対の脚
腹部から8対のエラ足
エラ足を拡大したところ
長い方・・・エラ(水中で呼吸)
短い方・・・気門(陸上で呼吸)
よく「ホタルの命は短いですよね」と言われます。同じように「セミの命は短くて1週間」ともよく言われます。どうもそれは、成虫になってからのことを言っているようです。
ゲンジホタルの命の長さは卵から成虫で死ぬまで約1年です。
ホタルは成虫になってからは確かに短いです。オスが1週間、メスが2週間と言われています。それも個体差があって、水だけでオスが3週間生きたことがあります。
令和2年7月
ホタルは光るからホタルだと思ったら光らないホタルがいるんです。光らないホタルは昼間飛んで匂いでオスとメスが出会います。そのため触角が発達しています。
令和2年6月
オオマドボタルの触角
昼行性で光らない
陸生
ゲンジボタルの触角
夜行性で光る
水生
ホタルの幼虫の6本の脚は前の方にあって腹が長いので歩きにくいため、お尻の先に尾脚(びきゃく=本物の脚ではない)があり、この尾脚で体を押して歩きます。これをシャクトリムシ型歩行と言います。
令和2年5月
脱皮直後は白色なので水替えの時など見落としがちです。注意が必要です。時間がたつと黒い色がついてきます。セミが羽化した時と似ています。ザリガニやゴキブリも脱皮直後は白色です。
令和2年4月
メスは下の川岸の草などにとまって光っています。オスはその光を探して飛んでいます。メスを見つけるためには高く飛ぶ必要はないのに、木の上まで飛んでいるオスがいます。それは、高く飛んで遠くにいるオスやメスを呼んでいるのです。たくさん集まったほうがオスとメスが一緒になる確率が高くなるのです。子孫を残すためのホタルの戦略の一つなのです。
令和2年3月
ヒメボタルのメスは後翅が退化して飛べないので、オスはメスを探すため低い所を飛んでいます。そのため、ヒメボタルの写真を撮ると、光の絨毯のようになります。
令和2年2月
集団同時明滅といって、ゲンジボタルのオスはオス同士協力して、2秒に1回の割合で同時に明滅しています。同時に明滅するということは、あたりが真っ暗になる瞬間があるということです。この暗くなった時に川岸の草の葉に止まって光っているメスを見つけるのです。
令和2年1月