10月号・11月号でエラの形が異なると説明しましたが、もっと分かりやすい見分け方は、前胸背板の模様の違いです。
ヘイケボタルは太い縦線の模様があり、ゲンジボタルは背板いっぱいにひし形の模様があるのですぐにわかります。
令和3年12月
ヘイケボタル ゲンジボタル
ヘイケボタルの幼虫のエラの形は、細くて萎れたようになって折れ曲がっていますが、ゲンジボタルのエラは、太くてぱんぱんに張っています。
その形が異なる理由は、生息に必要とする酸素量が違うからだと考えられます。ヘイケボタルは、少ない酸素量でも生息でき、ゲンジボタルは多くの酸素を取り入れないと生きていけないのです。そのため、ゲンジボタルの幼虫のエラはぱんぱんに張って表面積を大きくしていると考えられます。生息に必要な酸素量を考えると生息場所がヘイケボタルは止水域、ゲンジボタルは流水域というのも納得できます。
令和3年11月
ヘイケボタルのエラ
ゲンジボタルのエラ
上の写真は、幼虫のエラをシルエットにして見やすいようにしたものです。比べてみると形の違いがはっきり分かります。同じエラなのにどうして違うのでしょうか。それについては11月号で。
令和3年10月
ホタルの幼虫は、腹部の末端にある尾脚(びきゃく)を使って頭部や節の汚れなどを拭い取る行動をします。体表の付着物などを取り除いてクリーニングするようです。(参考文献:「ホタルの不思議」大場信義著)
尾脚(びきゃく)の役割としては、その他に「歩く時に尾脚で押して歩きやすくする」「流されないように石などに尾脚でしがみつく」などがあります。
令和3年9月
尾脚 ~ 小さな爪がびっしり
幼虫には大あごと呼ばれる口があり、その大あごでカワニナにかみつきます。大あごの中は、ストロー状になっていて、そのストローを通して、はじめにカワニナに蓋をされないようにしびれる毒を注入し、その後消化液を流し込んでカワニナを溶かします。その溶かした液をストローで吸います。
令和3年7月
ゲンジボタルの幼虫の頭部
それは、種が生き残るための戦略なのです。洪水が起きた時、体が大きい方が流されにくいようですが、小さい方が、狭い隙間に潜り込んで助かるかも知れません。また、エサが少なくなったとき、たくさん食べる大きい幼虫は飢えてしまっても、小さな幼虫は少しのエサで生き残れるかもしれませ。大きさをバラバラにすることによって種が生き残る確率が高くなるのです。
令和3年6月
同じ時に生まれた幼虫たち
ホタルの交尾は、夜中から朝まで続くと言われています。それは、オスの遺伝子を確実に残すための戦略なのです。
オスは精子をたくさん持っているため、複数のメスと交尾する方がいいように思われますが、受精には後から交尾したオスの精子が使われるため、一匹のメスを独占する方を選択したのです。
令和3年4月
ゲンジボタルのメス(左)とオス(右)
撮影:中村光男氏
ホタルは日本だけだと思っていませんか。実は、世界には約2000種類ものホタルがいます。(日本は約50種類)東南アジアではホタル鑑賞ツアーが盛んです。
令和3年3月
パプアニューギニアのホタル
特定の木に数十万ものホタルが集まり、クリスマスツリーのように点滅します。
撮影:大場信義氏(北九州市ほたる館パネルより)
次の2つの理由が考えられます。
①乾燥しないように、川の中の環境に近い雨の日を選んでいる。
②雨が降ると土が柔らかくなって潜りやすい。
ただ、経験上シーズンの最初は雨の日に上陸しますが、その後は曇りの日でも上陸することがあるようです。
令和3年2月
光ながら上陸する幼虫
撮影:中村光男氏
はかない命として代表的なカゲロウの成虫は、口が退化してエサを食べません。幼虫の時に蓄えた栄養だけで活動します。羽化したらその日のうちにメスと交尾して、数時間から一日の長さで命を終えます。エサを食べて自己が生きることより、子孫を残すことの方が大切なのです。ホタルもカゲロウに似ています。ただし、水だけは飲むので1~2週間は生きます。水しか飲まないのは、子孫を残すことに専念するためなのです。
令和3年1月